2002 Summer Up date

。。。物語のページへ戻る。。。

サーシャの花   いつも、さわやかなそよ風が吹いているひとつの村がありました。
その村のはずれに水の澄んだ小川が流れています。その両側にはいつも可愛い花が咲いていました。
今年はその花に混ざって、この村の人が愛着を込めて「サーシャ」と呼ぶ花が咲いたのです。

  そんなある日のことでした。
雨上がりの朝、空にはきれいな虹が架かっていました。
サーシャはその虹を見上げています。そして、虹色に輝く花びらがそよ風にゆれています。

  その虹に誘われたかのように、一人の少女が姿を現わしました。虹を見る紫の瞳が美しくかわいい少女です。
少女は川岸に咲く花に近づき、花をながめ、香りを楽しんでいます。

  「まあ、見たことのない花が咲いてる…きれいな花だわ。虹のように輝いてる…」
少女は手をのばし、その花を取ろうとしました。その時です。
「だめ…!、わたしをとってはだめ…!、わたしはここでしか花を咲かせられないの…」 少女はハッとしました。
「ごめんなさい。とってもきれいなので,つい…。わたしはアヤ、あなたは?」
「この村の人はわたしのことを、サーシャって呼んでるわ…」
「サーシャ……かわいい名前ね…」
アヤはサーシャ、サーシャと何度もつぶやき、じーっと花を見つめながら目を閉じ、心の中でサーシャに話しかけました。


  「サーシャ…あなたをながめていると、なんだか元気になるわ。今朝はとても気分がよかったの。
雨上がりの空に虹が架かってた…久しぶりに外に出たいと思った…きっとサーシャ…あなたがわたしを呼んでくれたのね。あなたと会えてうれしかった…!!」
「アヤ、あなたと会えてわたしもうれしい…、ところでアヤは外に出るのが久しぶりって言ってたけど…どうして?」
「サーシャ、わたしは病気なの…。お母様とお医者様の話しを聞いてしまったんだけど…目が見えなくなるかもしれないんだって…。でも、あなたに会えて元気が出たわ。あなたの姿をずーっとおぼえてられるんだもの…」
「そう…よかったね、アヤ…。いつでも遊びにきてね。わたしもアヤを待ってるからね、そしてお話ししましょ…」
「ありがと、サーシャ…。また来れればいいなあ…?」
サーシャは、アヤと友達になれてとても幸せでした。 そして日は過ぎてゆきましたが、その後アヤの姿を見ることはありませんでした。


アヤ   「アヤ…どうしたんだろう?」心配になったサーシャは南の風に聞きました。
「南の風さん、アヤのことを知りませんか?」
「ああ、サーシャ、この村の子供たちなら知ってるでしょう。聞いてきましょう」

さて、南の風は一緒にシャボン玉遊びをしているララとアイ(男の子)を見つけました。
「アヤは村はずれに住んでる子なんだけど、目の病気で今は外に出られないんです」と、ララが答えました。
「アヤがどんな様子か聞いてきてくれませんか?」
そして、たくさんのシャボン玉を作るようにと言いました。2人は大喜びでシャボン玉を次から次へと飛ばしてゆきます。するとシャボン玉は、かたまりになって大空に上っていったかと思うと、ひとつの大きなシャボン玉となってゆっくり降りてきたのです。そして…
「やあ、ボクはボンっていうんだ。よろしくね…」
驚いているララとアイの前に降りてきたのは、かわいい顔をしたでっかいシャボン玉でした。にっこりした目、そして大きな口がついています。
「さあ、ボクに乗って…」ボンは大きな口を開いて二人をのせるとふわふわ、アヤの家の方へ飛んでゆきました。


  家の庭でアヤのお母さんが静かに花を見つめています。ララは声をかけました。
「こんにちは。わたしララって言います。アヤのぐあいはどうですか?心配してる方がいて、様子をお伺いしたいと思いまして…」
「ありがとう、ララ…。それがね、一度外に出てから元気そうになったと思ったんだけど、急に病気が悪くなって…、アヤの目は、もう見えないかもしれないの…」
ララはなんて返事をしてよいかわかりませんでした。
「アヤはサーシャという花をもう一度見たいと言うのだけど、探しても見つからないのよ。ララはその花のこと知らないかな…?」
「サーシャ…???、アイは知ってる?」 アイも首をふるだけでした。
「おばさん。一度、マッサおじさんに聞いてみます。きっと知ってると思います」


カフェのマスター・Massa   こうして二人は、そよかぜカフェのマッサに話しを聞くことになったのです。
マッサは話し始めました。
「ほう、サーシャが姿を現わしたと言うのかね。うれしいねえ…。君たちは見たことがないだろうが、すぐそこを流れるそよ川の岸辺に咲くんだよ。一度咲くと今度はいつ咲くのかは誰も知らない…。
ひとつわかってることは、空に虹が架かってる時に咲くんだ。そして、虹が消えるとサーシャも消えてしまう不思議な花なんだ。そういえばしばらくの間、虹を見たことがないな…。サーシャが咲いたときはよく虹が見えるはずなんだが…?」
「そう言えば、少し前は虹がよく出ていたように思うよ」 アイがぽつんと言いました。
「どうしてなんだろうね?」 ララも首をかしげながらマッサを見つめています。
「これは何かあるな…、ちょっと店の留守番を頼むよ」
そういってマッサは走ってゆきました。 しばらくして、どこかへ行ってたボンが帰ってきました。
「南の風も困ってるよ。あの日以来、南の風もサーシャの姿を見たことがないんだって…」
「ボン、サーシャは虹が現れないと姿を見せないそうよ。マッサおじさんがそう言ってたもん」
「そう言えば最近、お日様を見ないよね」 と、アイが口をはさみました。


  こうして話し合っている時、息をきらせてマッサが戻ってきました。
「村の図書館に行ってサーシャについて調べてきたよ。どうやらそれによるとサーシャを嫌っているものがいることがわかった」
「だれ?それは…」 ララが聞き返します。
「北風だよ…」
「???…北風?、どうして?」
「北風は人々が喜ぶのをいやがるんだ。サーシャを見る喜びは、どんな喜びよりも大きいことを北風は知ってるんだ。だから黒い雲を連れてきて、虹が現れないようにしているらしい…」
「それじゃあ、サーシャは花を咲かせられないじゃないか!」 アイがどなりました。
「そしてもう一つ、わかったことがあるんだよ…。サーシャが咲いてるのは、最初に花を咲かせてから30日、ということだ」
「と、いうことは…、アヤが見た日から今日は…たいへん!!…あと1日しか咲いてられないんだ」
ララがそう話すと、3人は顔を見合せました。そして、空を見上げました。空はどんよりと曇ったままです。


ボン   ララとアイはボンに乗ってアヤの家へ向かいました。アヤのお母さんにそれらのことを話すためでした。 アヤのお母さんはそっと目頭を押さえながら言いました。
「ありがとう。ララ、アイ…。アヤのことを気遣ってくれて…」
「おばさん、あきらめないで下さいね。きっと、きっと…」
そういいながらララは庭でじっと待ってるボンに目をやりました。突然、ララの目がキラッと光りました。 そして…


…後編につづく

サーシャのバナー